抱いて、抱かれて、堕ちて、溺れる。



玄関の鍵を開け、部屋へと入る。




冷蔵庫から缶ビールを出し、一気に飲み干した。





その時、携帯が鳴り出した。





『もしもし?』





『…純くん?暁です…』





暁だった。




さっきまで可愛ちゃんと一緒にいて、たった今キスしたばかりで…




俺は何故か急に罪悪感にかられた…。





『おっおぅ。久しぶり。』




『何回もメールしたんだよ?今どこ?』




『家だよ?風呂入ってたから。』




暁に嘘をついてしまった…。





『そうなんだ…。忙しいなら切るね。ごめんなさい…。』




今しかない。




暁に全てを話し、別れを告げるのは…。





『あのさ…もしかしたら…もう知ってるかもしれないけど…。』




『なに?』





『俺…暁がこの前見たあの子と…』





『イヤ!聞きたくない!!』




『頼むから聞いて?俺から言わなくても、明日司から聞いちゃうと思うから、それなら自分から言いたいんだ。』





『ヤだよ!だって、私にとって良いことじゃないもん!』





暁は…泣いていた…。





だけど、もう言うしかないんだ…。





『俺、彼女がいる。』






その瞬間、電話が切れた…。




暁が切ってしまった…。





これでいいんだ。





こうするしかなかったんだ…。







< 143 / 287 >

この作品をシェア

pagetop