抱いて、抱かれて、堕ちて、溺れる。




私は、夫に娘を託し、行くあてのないまま、ただ歩き続けた…。






これからどうしよう…。





気がつくと、あのショーケースの前にいた…。







ペアのネックレス…。






そう…あの日見た、このネックレスが頭から離れないでいたんだ…。






『いらっしゃいませ。何かお探し物ですか?』






『…この…ネックレスを見せてください…。』







3連のリングが付いたペアネックレス。





『こちらはとても人気なんですよ?お相手さまにもきっと喜ばれますよ。』





これを買って、どうする…?




純くんに渡すつもり…?





純くんには…彼女がいるんだよ?




こんなの貰ったって迷惑だよ…。






『…これ…ください。』






買ってしまった。





私のは箱に入れず、首に着けた。




もう一つは綺麗な箱に入れ、リボンをかけてもらった。






もう、後戻りはできない…。




ネックレスの入った紙袋をギュッと握りしめ、震える手で私は純くんにメールをした。







<逢いたい…。>






ただ一言…。





この一言に、私の今が全て詰まっている。







お願いします。返事をください…。









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