抱いて、抱かれて、堕ちて、溺れる。




夫の表情が…こわい。



私は高鳴る鼓動を押さえながら車に乗った。





ドアを閉めた瞬間。




『お前いい加減にしろよ?あいつか?相手はあいつか?』



『…なんで?ち、違うよ?』




『嘘つくな!!お前の顔見てたらわかるんだよ!!…出せよ。』




『…えっ?』




『ネックレス出せよ!!あいつと同じやつなんだろ!?』


勢いよく車が動き出した。




普段から荒い運転が、更に荒くなる。





『…ネックレスなんて、持ってないよ…。』





でも、私の嘘もここまでだった…。






信号で停まった瞬間、私の鞄を奪い、ネックレスを探す夫…。




やだ…。やだよ…。






私の願いも虚しく、ネックレスは簡単に見つけられた…。





『…くそっ!こんなもの…。』




信号が青に変わり、車が動いた瞬間…。





『あっ!や、やめて!!』





夫は…ネックレスを引き裂き、窓から棄ててしまった…。





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