お見合い
実現
お皿から目を離さず、デザートを黙々と食べ続けた。
美味しいはずのそれも美味しく感じない。

「緊張、とれてない?」
「・・・はい」
視線を上げた先にある優しい笑顔は、どこかあの2人を思い出させた。
それだけで少し心が穏やかになった。

「梓も俊介も関村さんの話をよくしてくれるよ」
「・・・噂、ですか?」
「うん。よく家に泊まってる、とか。カシスグレープが好きとか」

それを聞いて、少し笑えた。

「あと、我儘とか」

・・・っち。

「よく言われてます」
「いつか会いたいと思ってた。まぁこんな形で会えるとは思ってなかったけど」

楽しそうに笑うその笑みは本物だろうか。

「あ、あの!ごめんなさい。これは私の我儘なんです。夢というか、憧れというか」
「うん、聞いてるよ。ちょっと不思議系な人かと思った」
「不思議系?」
「でも、いいね。来てよかったよ」
「お休み、潰してしまってすいませんでした」
「いや、気にしないで。楽しいから」
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