うしろの正面だーあれ vol.2
「ねぇ、沙良‥
今日、一喜君が出所したわ。
あなたはあんなことをした一喜君を、それでも許すの?」
沙良の母親は、哀しい瞳をして呟いた。
「あなたは強くて優しいものね。…だけど、人一倍弱くもあるでしょう?
憂君が居た頃は、とても強かったけど‥」
ポツリ、涙が零れた。
「憂君さえ生きてくれていたら‥
嗚呼、一体誰が‥何が一番悪いのかしら‥」
両手で顔を覆い、沙良の母親は泣き崩れてしまった。
病院の、片隅で。