うしろの正面だーあれ vol.2
試験が始まる直前まで参考書を読んでいた幸亀だったが、やがて参考書を鞄の中へとしまう時が来た。
裏向きで試験用紙が手元に配られ、チャイムが鳴ると同時に一斉に鉛筆の音がカツカツと教室に響く。
緊張で手が氷のように冷たい。
幸亀は鉛筆を握り締めるように、ひとつひとつ空欄を埋めていった。
半分が過ぎた頃だった。
「高井戸!何だこれは!!」
教室に教師の怒声が響く。
何かしたかと驚いて顔を上げると、教師が怒鳴っていたのは幸亀にではなく、妃鶴にだった。
試験中だということも忘れて、ざわざわと喋り出す。
「カンニング」
「カンニングだって!」
エリート校の中でも天才と謳われる妃鶴のカンニング行為に、教室内は騒然となった。
「静かに!!他のみんなは試験を続けるように!…高井戸は先生と来なさい」
代わりの試験官が到着すると、教師と妃鶴は教室を出ていった。