うしろの正面だーあれ vol.2
「パ……、こうきおにいちゃん、」
杏奈が僕のことを、父と重ねて見ていることも知っていた。
愛を与えない父に対し、愛を渇望していることも。
ギィ、と勉強机の椅子を回す。
「杏奈、おいで」
そう言って手を広げると、一瞬だけ泣きそうに眉を八の字に下げ、その後笑顔で飛び込んでくる。
僕のお腹にスリスリと、何度も肌の感触を確かめるその姿に、スキンシップに飢えているのだろう、と悲愴な目で杏奈を見下ろしながら頭を撫でてやる。
「パパ…、パパ、だいすき」
僕に聞こえないようにと小さく呟くその微かな吐息に、僕の炎は燃え上がり、禁忌を冒す決意をしたんだ…。