うしろの正面だーあれ vol.2
鎖
そよそよと、爽やかな風が頬を撫でる。
広い大学内にある、中庭のこのベンチが彼女のお気に入りである。
「楓!楓ってば!」
耳に飛び込んできた大きな声にハッと我に返り、頬杖をつくのをやめて見上げる。
「ボーッとしちゃって。何か考え事?」
そう言うと、柔らかいウェーブがかった長い髪の女の子は楓の隣に座った。
「晴香…」
「また彼のこと考えてたの?」
そう聞かれると、楓はばつの悪そうな顔をした。
…晴香には何でもお見通しだ。
「あっ、ほらほら!噂をすれば何とやら♪」
そう言って手を振る。
眩しくて見えない。