うしろの正面だーあれ vol.2

そっくり、というわけではない。

ただ、ふとした瞬間にタケルがダブって見えるのだ。

もう、忘れると決めたのに…


ズキン、胸が痛む。



タケルが逮捕されてからも、楓の想いは変わらなかった。

ずっと待つつもりでいたし、例え犯罪者と言われようともタケルのことが好きだった。


けれども世間は冷たかった。

絶え間なく響く罵声に、いつしか表情を無くした。

毎日独りで食べる弁当は、日に日に残す量が増えていく。

「グループで好きなように」
そんな授業いらない。


死んだらどんなに楽かと思ったことさえある。


けれどあと一歩、踏み出す力は自分には無い。

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