なつみかんの花びら
入学式の日、新入生代表の挨拶前。
早く来過ぎて、ふらりと教室に立ち寄ると……。
肩までもないふわふわの髪。
あごの下で毛先が遊んでいる。
そして花に触れる優しい手つき。
「か、や──?」
振り返った彼女は柔らかい笑みと、少しの疑問を浮かべていた。
「カヤって何ですか?」
彼女は、僕の求める人ではなかった。
柑夜の昔の髪型と同じだけだっていうのに。
今と同じ訳がなかった。
ここにいる訳が、なかった。
「あ、すみません。気にしないで」
「はい? あ、もしかして。
誰かに似てた、とかですか?」
ふふふ、と彼女は笑った。