なつみかんの花びら
「何を買うんですか?」
わたしたちの町に、買い物に向いている場所なんてある訳もなく、電車に乗ってショッピングモールへ。
学校の女の子たちはいつもこうやって行ってるんですかね。
お疲れ様です。
「そうですねぇ。
えっと、実は、蜜樹くんになつみかんの何かを贈りたいんです」
ははーん。なるほど。
この町の風習のひとつで、結婚相手にはなつみかんの何かを贈ることになっているのです。
女性へのプレゼントよりも男性への物を選ぶのはなかなかに大変なそうで。
「蜜樹くんにですか……」
久しぶりに会った彼はオシャレさんになっていましたし……。
「んー、──香水?」
「いいですね!
じゃあ、少し見てみましょう」
手をパンッと打ち、花音さんは瞳を輝かせました。
たくさんの店があるのでひとつずつ回ります。
三軒目ほどでようやく落ち着いて選び出しました。