なつみかんの花びら
「あ、柑夜さんは蜜樹くんの初恋の人なんですよね」
「っっっっ何で知って……!」
慌てるわたしと対象的に、彼女は香水の香りを普通に試しています。
「私の分も買おうかな」なんて呑気なっ!
「今はどうですか?
好きな人はいます?
蜜樹くんか──夏樹くん、とか」
その名前を聞くと同時に肌がぞくりと粟立ちました。
何で何で何で。
ただの名前なのに。
頬が朱く染まります。
「夏樹くん、ですかぁ」
「〜〜っちが」
何だか、とても乱されている気がします。
落ち着いて、落ち着いて、落ち着いて……なんて無理ですよ⁉
「まぁ、その話は楽しそうで心惹かれますが。
それは今度じぃっくり、夏樹くんとの恋のお話して貰いますね」
やめて下さい。
「……私が初恋のことを知っていたのは、蜜樹くんが話してくれたからなんですよ」
「蜜樹くんが──?」
「はい。
初恋の子は元気でね、ウソが吐けなくてね、ってもうたくさん。
私が妬けちゃうくらい」
イタズラっぽい笑顔の花音さんはとても可愛いらしく。
「でもそれは、私が仲良くなりたいと思うほどに魅力的な子のお話で」