なつみかんの花びら
「誕生日、この前だったんだって?
全くー。言ってくれたら当日に焼いたのに」
「え、もしかしてこれケーキ⁉」
「そうだよ。
前に焼いてあげるって約束したでしょ」
拗ねたように唇を尖らせて、可愛くもあって。
ひとつひとつの仕草がわたしよりずっと、ずっと……。
「あぁ、そうだったな。ありがとう。
さすが、料理部部長。絶対美味いよ」
「へへ、頑張ったよ」
頬を染めて笑う少女は、一目で彼に恋をしているんだとわかりました。
わたしより可愛くて、大人っぽくて。
そして、何より夏樹くんと釣り合う年齢、見た目でした。
ねえ。夏樹くんも満更でもないんじゃないの?
楽しそうに話してるしね。
「あぁ、そっか。
もう────────」
見ていられなくて、身を翻しました。