なつみかんの花びら
さすがに少しおかしいわたしに気づいたのか、彼は疑わしげな目を向けてきます。
「お前、今日おかしいぞ」
「おかしくなんかないよ?」
ウソ吐け、と夏樹くんが呟きます。
「柑夜はあの時からインドアじゃん。
今も変わってないくせに。
何かあるんだろ。言えよ」
目を細められ、重なっていた瞳に耐えられなくなり、視線を逸らしました。
仕方がなく、答えます。
「思い出を創ろうとしてるだけだよ」
別れる前に一緒にいたい。
思い出が欲しい。
まだ。
まだ足りない。
だから、別れようなんて言ってあげられないよ……。