なつみかんの花びら




「こんなところ、来てて大丈夫?
今日は夏休み最後の日曜日でしょ。
あの子に逢いに行ってもいいよ?」


ウソ。行かないで。


「あの子……?」

「料理部部長の可愛い子。
黒髪が素敵で大人っぽくて。
夏樹のことが好きな子。
ケーキ、美味しかった?」


そう言った瞬間、いつの、誰の話をしているのかわかったらしく、彼は驚いて目を見開きます。

なんだかわたし、まるでストーカーみたいですね。


「おま、え。知って……」

「ごめんね、盗み聞きみたいになっちゃって。
この前、夏樹の家に行こうとしてたから」


心底呆れたような、重いため息にびくりと肩が震えました。


「バカだ、バカだと思ってたけど、ここまでバカだなんてな」





< 51 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop