なつみかんの花びら
息がとまるような感覚。
しばらくして、わたしは夏樹くんに抱き締められているとようやく気づきました。
「柑夜────柑夜ッ」
壊れてしまいそうな力でした。
わたしの体と、夏樹くんの心が。
「ふ、っ……ぅ」
繰り返し彼に呼ばれるわたしの名前に、涙腺が溶かされていきました。
はらはらと零れ落ちる涙の熱さが痛くて、優しい。
「柑夜。信じてくれ」
「……うん」
何を、なんて言葉はいりません。
大人っぽくなった彼の久しぶりに聞く、泣きそうな声が答え。