なつみかんの花びら




「……っ⁉」


驚いて体を離し、夏樹くんの顔を覗きこむと真剣な瞳と目が合いました。


そして差し出されるリングケース。


「今日、渡そうと思ってたんだ」


はにかみながら、笑った彼は昔と変わらず。

花が綻ぶような笑顔です。


なんだ。
あんなに考えてバカですね、わたし。


「はいっ──」


吸い寄せられるように、自然に唇が重なります。


「愛してる」


唇の上で囁かれた言葉に、抱き締められたような気持ちになりました。






< 59 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop