なつみかんの花びら
『ということは、夏樹くんと⁉
わぁ、おめでとうございますー!』
「うんっ!」
『本当に、よかったですね』
はしゃいだような声のトーンから、急に真剣味を帯びた声に変わりました。
あの日から今日の間に花音ちゃんとは会っていましたし……。
悩んでいたこと、気づいていたんですかね。
「──うん」
『じゃあ、今度夏樹くんへのプレゼント選びに行きましょうね』
「ありがとうっ」
このプレゼントとは、わたしの地元の風習で、婚約者になつみかんのものを贈るということ。
六年前に、花音ちゃんに付き合って選んだことをまだしっかりと覚えています。