Finale Love
「哲也さん、そんなこと言ってたんだ」

「うんー。雄ー・・・」

「ん?」

「私が言わなくてもわかってるよね?」

「わかってるよ」

「だったら怖がらずにそんな自分自身と向き合わなきゃ」

「うんー・・・」

「今の雄なら、そんな自分と向き合うことが出来ると私は想うよ」

「弥生ー・・・」

「私は雄がどんな恋愛をしてきて、どんな傷を抱えてるか、わからない。
私が出来ることは、雄のそばで雄を見守ることしか出来ない」

「弥生ー・・・」

「あとは自分自身だよ」

「うん・・・」

雄祐は何かを決意するように弥生に話始めた。

「俺な、メジャーになるまで恋愛しないって決めてたんだ。
でも、ある時、哲也さんに言われたんだ。
『今の俺じゃメジャーを目指せない』って。
その原因は俺自身にあるってわかってた。
でも認めたくない俺もいた。
それに、当時、付き合ってた彼女はいた。
けど、俺は知らぬ間に彼女を傷つけてた。
ファンの嫉妬だったりファンへの気遣いを見せるたび彼女は傷ついていた。
俺はそんなことにも気づかず自分勝手に自分の都合で彼女と付き合ってた。
そして彼女の気持ちを振り回してた。
最終的に俺は彼女に言われた。
『あなたにとって私は、アクセサリーや飾りに過ぎないのね。
今のあなたから歌うことをとったら何が残る?
きっと何も残らないんだろうね。
でも、私はあなたを好きになれてよかったと想ってる。
こんな私を大切に思ってくれてありがとう。 そして、歌うことをやめないでね』
これが彼女の最後の言葉だった。
俺は初めて自分自身を攻めた。
こんな俺が『愛』を語る歌なんて歌えないって。
歌う資格なんて、ないと想ってた。
でも、弥生と出会った時に感じた気持ちは、そんな俺を優しく包んでくれた。
こんな俺のことを弥生は『好き』と言ってくれた。
『ありのままでいいんだよ。
雄は雄でいいんだよ。
私はずーっと雄のそばで雄をちゃんと見てるから。
雄のこと、信じてるから』
その言葉に俺、めっちゃ救われた」

「雄ー・・・」

弥生は優しく雄祐を胸の中へと抱きしめた。

「雄ー・・・。
今までずっと辛かったね。
よく頑張った。
話してくれてありがとう」

「何、弥生、泣いてんだよ?」

「雄だって泣いてんじゃん」

「俺が泣くわけねえじゃん」

「雄のウソつき」

「何、言ってんだよ・・・。
でも、こうなれたのは弥生のおかげだな。
ありがとう」

「私はただ雄にキッカケを与えただけ。
こうなれたのは、雄がそうなりたいと想ったからなれたんだよ。
雄が頑張って努力して逃げ出さなかったからなれたんだよ。
そんな自分自身に誇りと自信をもって。
雄なら、きっとなれる。
私はそうー信じてる」

「弥生ー・・・」

「これでちゃんと前に進めるね」

「ああー・・・」
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