水没ワンダーランド
「…で、あるからしてー…あ、ここテストに出るからライン引いておけよ」



白黒に染まった教師が言う。





(誰も気づいてないのか?)





那智はキョロキョロと教室を見回した。




カチ、コチ、カチ、コチ。



やけに時計の音が大きく聞こえる。




もう、ガマンと不安の限界だった。



那智は隣の席の女の子に声をかけた。



もちろん、彼女も全身白黒だった。




「な、なあ…なんかさ、教室おかしくね?」



カチ、コチ、カチ、コチ。




カチ。




時計の音がよりいっそう大きく響く。



「え?」


女の子が那智を見た。


「だからさ、何か教室おかしいだろ?」




そのとき。

テレビの砂嵐画面のようなちらつきが那智の視界を支配する。



ザーッという耳障りなノイズ。

一瞬ぶれる視界。



(な、なに……!?)



那智は思わず目を閉じた。


「なに言ってるの、那智くん?」


女の子の声がした。

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