水没ワンダーランド
「…え?」


おそるおそる目を開ける。



(あ、あれ…?)



元に戻っていた。


教室に色彩が戻っている。



人はちゃんと人の色をしている。

モノクロなんかじゃ、ない。



「変な那智くん」



那智の隣に座っていた女の子は気味が悪そうにそう言った。



「あ……ごめん…」




(夢、か?それにしてはやけにリアルだったような…)



常識的に考えて、世界から色が欠落することなんてまず無い。



夢、だったのだろうか。



(さっきのは…一体…)



景色に色彩が戻る瞬間。


テレビの砂嵐のように視界がブレた瞬間。




(気のせい、だよな…)



あの一瞬の間に、
那智の目に映ったもの。




ほっぺの端っこまで口が裂けている猫の人形が


那智の方を見て、笑っていたのだ。


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