水没ワンダーランド

「那智さん!!」


スージーの声がして、那智はうっすらと目を開ける。


瞼が重い。


そこて初めて、那智は自分が意識を失って倒れこんでいたことを理解した。


「すしえが、強く手を握りすぎたから」


「そんなに強くにぎってませんよ!?……にぎってませんよね?」


スージーがおそるおそる那智の顔を覗き込む。



「……や、大丈夫」


立ち上がる。

頭痛もないし、手もきちんと動く。


(夢……?)



夢にしては、妙に鮮明だったような。



「大丈夫ですか?少し休んでいったほうが……」


「平気。……それより、行くったって、どこに行くんだよ」


しわくちゃになったシャツの裾を手でのしながら、那智は投げやりにつぶやく。


迷い込んだ人々を救い出すどころか、見渡す限り草原と林ばかりでどこに向かって歩けばいいのかもわからない。


「とりあえず……歩きます?」


「あてもなく歩くんじゃ、下手すりゃのたれ死にだぞ」


こんな広い草原、と付け足そうとする那智の言葉にかぶせて、猫が言った。


「下手も何も、死ぬよー?ずっと続く原っぱだから」


「……へ?」


那智とスージーの目が点になった。
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