水没ワンダーランド
「いらっしゃい、お客様!この屋敷には何のご用で?」
さきほどの骸骨ケンタウロスとは違い、どうやら攻撃はしてこないようだ。
奇妙な風貌には腰を抜かしそうになったが、那智はいくらか安堵する。
「いや、用……ってわけじゃないんだけどさ。その、あなたはこの屋敷の人?」
人、という表現に少し違和感を感じたが、ドードー鳥は直立不動のまま答える。
「いかにも!私がドードーです」
さきほどと同じセリフをハキハキと告げるドードー。
「この屋敷に、人……みたいな猫と、女の子が来てるはずなんだけど」
「そうですか!ではこの屋敷には何のご用で?」
「……?」
ドードーの返事は、答えになっていない。
「あ、その……とりあえずその二人を探してて…」
「そうですか!私がドードーです」
まるで、同じ音声プログラムを繰り返す機械のようにドードーは答える。
骨格や筋肉は鳥のままのようで、笑うことができないのかもしれないが。
無表情のまま吐かれる機械的な言葉は、冷めきっていて不気味だ。
ドードーが喋るたびにカチカチとくちばしが打ち鳴る。