水没ワンダーランド
スージーは怪訝そうに、暖炉を見つめる。
しかしそこには闇とかびが生えた薪が転がっているだけだった。
「違うよ、すしえ」
いつの間にか立ち上がっていたチェシャ猫が、とんとんとスージーの肩をつつく。
「あっち、あっち」
「え?」
チェシャ猫が指差した方向は暖炉より少し外れた何もない場所。
「……」
スージーは机に乗っていたランプのしぼりを弱める。
さっきよりも少しだけ部屋の中が明るく照らされた。
(誰か、いる……)
何もないように見えたのは、ただ単に部屋が暗かったのと
気配がなかっただけ で。
暖炉のすぐ側に、誰かが立っていた。
スージーは目を凝らす。
すでにソレが人間ではないことに、なんとなくスージーは気づいていた。
「こんにちは、小さなお客さま」
スーツを着込んだ奇妙な鳥が、スージーを見つめていた。