水没ワンダーランド
金髪、いくつものピアス、着崩した制服。

学校一の女好きかつ成績は底辺の問題児、山本。


対して


天然の栗色がちらほら混じっているもほぼ真っ黒の髪、メタルフレームのメガネ、常にベストにネクタイという優等生ルック。

学校一の秀才かつ無愛想な、那智。


まったく正反対のくせに何かと公道を共にするこの二人は、学校内でも異色を放っていた。


そもそも、あのとっつきにくい那智に話しかけるという山本の勇気ある行動は誰も真似できなかった。


口数の少ない那智にあまり友達はいない。
その上、那智には両親がいなかった。


山本だけだった。
なんだかんだ言って那智を気にかけてくれるのは。




……バカだけど。



「おっ!きみかわいいね!一緒にハニードーナツでも食べない?とろけるような甘さに二人の甘いみら……」


「山本ッ!」


「痛い痛いいだだだだだ!やめっ……スネはやめろ!蹴るな!…ったく…口より足が先に出んだから…那智は」


目を離すとすぐに軽口をたたきにいく山本。


歯が浮くようなセリフをペラペラ言ってのける山本に那智はある種の感心を抱いていた。


パンの袋を開けて、中のメロンパンを取り出す。



「さっきの子もまあまあだったな」


「はいはい」


「あのドン引きしたような目も、実は俺の魅力のすさまじさにドン引きしてたんだぜきっと!」


「はいはい」


「お前俺の話聞いてねえだろ」


「はいはい」


「……俺ってかっこいいだろ?」


「それはない」


「なんでそこだけ聞いてんだよ?!」


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