寮の夜は甘い夜。
逸らした視線の先のグラウンド。
楓がいた。
女の子に囲まれているところはさすが学園の王子様って感じだけど、いつも隣にいた人がなんだか遠くに行ってしまったみたいだ。
あの人に、真夜中はいつも…。
「見るだけで顔赤くなるとか、相当重症なんじゃん。身体は素直だよねえ」
「ヘンな風に言わないでよ!」
認めたくない。
絶対やだ。
素直になれないとかじゃない、もともと好きじゃないんだ。
…そうであって欲しかった。