寮の夜は甘い夜。
それなのに、神様は残酷だ。
「由良、寝ないで」
甘い声で首元を吸う楓。
暗いのは怖いはずなのに、前はこんなことしたいとは思ってなかったのに。
怖くない、もっと起きていたい。
朝が来て欲しくない。
「楓…」
「なに?」
上目遣いの楓に返す言葉を模索する。
いつもと違う、胸の高鳴り。
苦しいのに、離れたくない。
「…好きなんかじゃ、ない」
「それでもいいよ。もっと触らせて?」
甘いトラップ。
吐息のかかった首元が熱く反応する。
重くなって来た瞼を閉じまいと、ふわふわした頭の中で考える。
学園の王子様。
昼間は女の子に囲まれて、別の世界の人のようだったのに。
隣にいる。
それがとてつもなく…嬉しかった。