寮の夜は甘い夜。
「でも、会いにきちゃってよかったの?」
踊った心にひなちゃんが冷水をかけた。
確かに、ここで会ったら私は負けを認めなくてはいけない。
楓が好きだって、自分から言いに来ているようなもの。
そう思うと、なかなか決断がつかなかった。
「……うー、やっぱ帰ろうかな」
夜になれば会える。
それまで我慢すれば……。
帰る方向に針が傾いた時、視界一面布で覆われ、暖かい安心する匂いに包まれた。
「許さねぇ。ここまで来て帰るとか、どんだけ俺を振り回す気だよ。帰さねぇからな」