寮の夜は甘い夜。




「……楓」




安心する匂い。




落ち着く体温。




会いたかった、楓だ。




「なぁ、俺のことはまだ好きになれないか?」




楓は耳元に口を寄せ、低い声で言う。




好きに決まってる、なんて答えは前から気がついていた。




一生懸命気付かないフリをして、高鳴る胸も無視をしてきた。




もう誤魔化すことはできない。




「……好き」




恥ずかしい。




楓は息をするように行為を伝えられるのに、私は言葉を言うのでさえ精一杯。




赤い頬を隠すように楓の胸に顔をうずめる。




しかし、それが逆効果だったようで。




「俺、今から襲う。由良、部屋に戻ろうか」




「……は!?何言ってんの!襲う宣言されて誰が部屋に戻るか!」




「意地でも連れて帰る。無理ならここで襲う」




無茶苦茶だ。




ひなちゃんは早々に退散して部屋の扉も閉められている。




逃げ場が、ない。

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