寮の夜は甘い夜。





「あ、君、星野由良ちゃん、だよね?」









いきなり知らない人にフルネームを言われた。









ちゃん付けで。









「あの、誰ですか?」









見たところ、楓程じゃないけど、結構なイケメン。









そして、同じ制服に同じ学年カラー。









・・・こんな人、いたっけ?









「え、俺のことわかんない?」









「え、自惚れですか?」









・・・確か、こんな会話、楓ともしたっけな・・・









「あはっ、やっぱ面白いね、星野由良ちゃん。








俺は朝陽祐司(あさひゆうじ)。









祐司って読んでね?」









そういった彼は笑顔が眩しいくらいに輝いていた。









やっぱ、不意打ちキスはないか。









って、当たり前じゃん!!









もう、私の基準が狂ってる。









「っはあ、じゃあ、祐司。私のことは星野由良ちゃんじゃなくて由良でいいですよ。」









星野由良ちゃんでも面白かったけど、呼びやすい方がいいだろうし。









「え、いいの?」









「いいって言ってるじゃん。」









「そっか、じゃあ、由良。その首もとのキスマークはなに?」









「・・・は?」









ここで、私 の背中を冷たい汗がツーッと流れた。









朝の出来事を思い出す。









鏡で見た首もとのたくさんのキスマーク。









胸元のあいたこの服。









着た後は鏡を見なかった自分。









鏡を見たか確認してきた楓。









女の子たちに睨まれた私。









嫌という程、全部、繋がる。









「みっ、見ないでください!」









「え〜、嫌でも見えちゃうよ?」









「そ、そんな。」









「俺が一緒にいて変な虫追っ払ってやるから、安心しなよ。」









「変な虫、くるんですか。」









「くるよ〜?沢山ね。」









そう言って祐司は意地悪そうに微笑んだ。




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