寮の夜は甘い夜。
「キス、したい?」
楓がニヤッと意地悪そうに笑った。
「やっ、やだよ…」
そう言っている間にも中はどんどん暗くなっていって、灯りといえば非常口の看板に人工の星たちだけ。
「いーの?俺、寝ちゃうよ?」
その発言は些かプラネタリウムの存在を否定するものだったけど、
プラネタリウムは一人で楽しむものだから別に誰がどう過ごそうが私には関係ない。
…じゃなくて!
「ヤダ!寝ないでよ、私一人で起きてるとか怖い!」
「んじゃ、キスする?」
「な、なんでそうなるの!?」
「お客様にご案内いたします。上映中は私語を慎んで下さいますよう、お願いを申し上げます。」
「・・・・」
怒られちゃった…
「ね?キスしよ?」
楓が私だけに聞こえるくらいの声量で話す。
中はもう完全に暗くなって、上映も始まっている。
こんなとこでキスするの、嫌だけど何十分も耐えられないかも…
「…少しだけ」
「待ってましたっ」
苦し紛れに言うと、楓は凄く嬉しそうに私に覆いかぶさる。
背を倒したイスがギギッと音がなった。
「……………んぅッ」
楓のキスは、深くて甘い。
溺れて意識が朦朧とするけど、奮い立たせると楓のキスが降り注ぐ。
口はもう、完全に塞がれた。