寮の夜は甘い夜。
楓は無理やり裕司を引き剥がすと、私の腕を強く掴んだ。
楓の指は白くなっていて指が腕に食い込んでいる。
腕の痛みに反射的に涙が滲む。
「楓………いたい。」
上を見上げると、楓は私のことを無視して裕司を睨んでいる。
相変わらず強く掴んだまま。
「楓、いたいって。」
「…るせえ、黙ってろ。」
「楓くんたら嫉妬しちゃって〜。いいよ、今日はもう部屋に戻るから。」
裕司は元きた道を歩き始めた。
楓は相変わらずキッと睨んだままで。
ヒラッと片手を上げたのを最後に、裕司の姿は見えなくなった。