寮の夜は甘い夜。






不機嫌オーラMAXの楓が私を見下ろしている。




「あ、えっと、その、ご、ごめんね?」






こ、こんなんでいいのだろうか…






楓を恐る恐る見上げると、ジッと私を凝視していた。





そして、頬を軽く掻くと「どもりやがって」と小声で言った。







むっか






人の気を知りもしないで。





「もーいーよ」





楓はそう言うと私の頭をぽんぽんと叩いて部屋の奥へと入って行った。






「って、ひなちゃんに両思いの滝沢くん。見てたんだ」






「そりゃあ、ねえ」


「ったりめーよ!」




ニコニコと機嫌のいい二人に楓は嘆息した。







「これ、お前らが仕組んだのか?」





そう言って、私を指差す。





「しっつれーね!」







「違う違う。由良が楓くんと喧嘩して落ち込んでたからアドバイスよ」





「落ち込んでた?」





怪訝そうな楓はどことなく頬が緩んでるような…





「って!落ち込んでない!断じて!」




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