寮の夜は甘い夜。
砂糖菓子のように甘く。
暗い部屋が苦手なのは以前と変わりない。
それでも以前より怖いと感じないのは、悔しいけど楓のお陰だったりする。
私の身体に巻きついている楓の腕は、力が入っていて顔が胸に押し付けられていた。
「く、くるし…」
「こんなのまだ序の口だよ?」
楓はそう言いながら腕の力を緩めない。
楓の胸からは規則正しい鼓動。
私はこんなにドキドキしてるのに、不公平だ。
「どうしてそんな普通にしてられるの?」
「由良は普通にしてられないんだ?」
「ち、ちがッ…!」
意地悪そうにクックックと体が揺れる。
頭は胸に当てられているから見られないけど、絶対意地悪そうな顔をしてるに違いない。