寮の夜は甘い夜。





どこか人のいないところ…。



そう思ってたどり着いたのが校舎裏。




ベンチもないからお昼ご飯を食べてる人も見当たらない。





「急になに?」




教室での不機嫌オーラが嘘みたいに普通に戻ってる…というか、ちょっとご機嫌。




なんでご機嫌なのかはさっぱりわからないけど、そんなことはどうでもいい。



「あのさ、人前であんなこと言わないでくれる?」





「あんなことってなんだよ。思ったことを言うのもいけないのか?」





「いや、そういうわけじゃないけど…」




「ならいいだろ。俺の由良が裕司と昼食ってるなんて考えただけでも頭にくる」





楓はさっきの光景を思い出したかのようにまた不機嫌になった。




でも、それよりも気になる言葉が一つ。




「…うん?今、俺の由良って言いました?」





「俺の由良だろ?」





「え、なんか根本から違う。あれ、いつからこの誤解が」





「誤解じゃねえよ。俺の由良だ。それと、明日から昼一緒に食堂で食うからな」






楓は嬉しそうに言う。




こんな誤解をしてるからあんなに怒るんだ、なんて納得したのも束の間。





教室で俺の由良とか言われたら困るんだけど。



いや、次の昼からは食堂だから、大丈夫、かな…?





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