寮の夜は甘い夜。
表の顔、裏の顔。
「……なぁー。俺、由良が足りないんだけど」
「………はあ!?」
悶々としたまま部屋に戻ってきて、楓の第一声がコレ。
でもなんでだろう、前より嫌じゃない。
楓はベッドで天井を仰ぎ見ている。
勿論制服のままで。
「学校はクラス違うし、一緒に昼食おうとしたら女子煩いし」
「食堂で食べなきゃいいじゃん」
「屋上鍵かかってるだろ。中庭だって土埃とかあるし」
「…教室で食べればいいじゃん」
「……ダブルデートならぬダブルランチか」
楓はムクっと起き上がると、左手を上下に振る。
それは、猫とかによくやる「おいでおいで」で。
それでも、嫌な気分にならないのは何でだろう。
「昼どうするかより、今は由良が欲しい」
「そんなセリフをサラッと…」