寮の夜は甘い夜。



グイッと引かれて体勢を崩したと思った時にはもう、楓の腕にすっぽりと包まれている。






嫌だって感じなくなったのはいつからなんだろう、ちょっと心地いいと思っている自分に落ち着かない。





ピッタリ密着した身体、息遣いに鼓動、全部共有してるみたいで、意識すればする程居心地が悪くなっていく。




好きだなんて、絶対に認めたくないのに。





初対面の無礼を思い出して、気持ちを奮わせる。






楓は、好きでも嫌いでもどっちでもいいのかな。




いや、好きのがいいっていうのは分かり切ってるけど、嫌いって思われ続けててもずっとこうしてるのかなって。





楓の昔の彼女さんたちもこんな熱烈なアピールを受けてたなんて、なんかイヤだ。


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