花は花に。鳥は鳥に。
城崎温泉郷。
歴史ある温泉街で、有名人も多く逗留したんだそうだ。
文豪ゆかりの地だとかで、『城崎にて』は有名だ。
そんな話を宿の仲居さんが教えてくれた。
七つの外湯が点在して、それぞれで効能も違うらしい。
建屋の外観も大きく違っているそうで、楽しみ方は人それぞれ。
夕闇迫る温泉郷。
川沿いの通りはレトロな街燈が灯り、オレンジ色の仄かな色に染められていた。
備え付けの浴衣に着替えて、ぽっくりを借りて、カラコロと通りを歩いていく。
帯は本来なら後ろで結ぶものだけど、わたしはちょっと洒落のめして斜め前でリボンに結ぶ。
その上から上掛けを羽織ってみた。
温泉旅館は心得たもので、コスメのセットされた手桶に無料入浴券まで持たせてくれた。
風情を楽しむだけでも、来てよかったような気がした。
宿を出る時にもらったパンフレットを眺めて、敬子に確認。
「ホテルから近い一の湯か、御所の湯のどっちかだね、行くなら。」
「どうせなら全部回りたいのになー。」
「全部回ると、逆に疲れて湯治にならないって仲居さんが笑ってたじゃん。」
「でもせっかく来たんだしー。」
敬子は残念さを噛みしめて、拳をグーで握り締めていた。
「はいはい、それは今度、カレシと一緒に来た時にでもしてね。」
「やっぱりー? えへへー。」
この街は一度や二度で満足できるような観光地じゃありません、てね。
敬子が考えてることくらい解かるよ、わたしも同じこと考えたもの。
敬子は唇をつんと突きだして、ちょっと不満げな顔をした。
「混浴だったりしないかな?
やっぱり、カレシ以外の男と一緒になんて入りたくないしー。」
「外湯はぜんぶ別々だってさ。その代わり、家族風呂とか貸し切りできるみたいよ?」
兵庫県は条例で混浴を規制中だそうだ。
ここを押した社長も、これがあったから城崎にしたのかも知れない。
そして幹事にとっても渡りに舟だったんだろうか。
ゴネるセクハラ上司の要望を、堂々と躱せるわけだもんね。
温泉と言えば城崎ですよ! なぁんて。
「お、また会った。」
ほんとに。
街燈の下でばったりと、坂崎課長と出会ってしまった。
歴史ある温泉街で、有名人も多く逗留したんだそうだ。
文豪ゆかりの地だとかで、『城崎にて』は有名だ。
そんな話を宿の仲居さんが教えてくれた。
七つの外湯が点在して、それぞれで効能も違うらしい。
建屋の外観も大きく違っているそうで、楽しみ方は人それぞれ。
夕闇迫る温泉郷。
川沿いの通りはレトロな街燈が灯り、オレンジ色の仄かな色に染められていた。
備え付けの浴衣に着替えて、ぽっくりを借りて、カラコロと通りを歩いていく。
帯は本来なら後ろで結ぶものだけど、わたしはちょっと洒落のめして斜め前でリボンに結ぶ。
その上から上掛けを羽織ってみた。
温泉旅館は心得たもので、コスメのセットされた手桶に無料入浴券まで持たせてくれた。
風情を楽しむだけでも、来てよかったような気がした。
宿を出る時にもらったパンフレットを眺めて、敬子に確認。
「ホテルから近い一の湯か、御所の湯のどっちかだね、行くなら。」
「どうせなら全部回りたいのになー。」
「全部回ると、逆に疲れて湯治にならないって仲居さんが笑ってたじゃん。」
「でもせっかく来たんだしー。」
敬子は残念さを噛みしめて、拳をグーで握り締めていた。
「はいはい、それは今度、カレシと一緒に来た時にでもしてね。」
「やっぱりー? えへへー。」
この街は一度や二度で満足できるような観光地じゃありません、てね。
敬子が考えてることくらい解かるよ、わたしも同じこと考えたもの。
敬子は唇をつんと突きだして、ちょっと不満げな顔をした。
「混浴だったりしないかな?
やっぱり、カレシ以外の男と一緒になんて入りたくないしー。」
「外湯はぜんぶ別々だってさ。その代わり、家族風呂とか貸し切りできるみたいよ?」
兵庫県は条例で混浴を規制中だそうだ。
ここを押した社長も、これがあったから城崎にしたのかも知れない。
そして幹事にとっても渡りに舟だったんだろうか。
ゴネるセクハラ上司の要望を、堂々と躱せるわけだもんね。
温泉と言えば城崎ですよ! なぁんて。
「お、また会った。」
ほんとに。
街燈の下でばったりと、坂崎課長と出会ってしまった。