花は花に。鳥は鳥に。
お互いに、気付けばずいぶんと酒が進んでしまっていた。
いい雰囲気になってるな、と思った。
店内には静かなジャズと、少ないお客の囁きのような話し声が、まるでさざ波のように満ちている。
このまま、行くとこまで行ってもいいかな、なんて思っていた。
祐介はどうせまた、どこかの見知らぬ誰かに寂しそうな目を向けているんだ。
わたし一人が我慢したって、しなくたって同じなら。
ヤケになってるのかも知れないし、酔ってるからかも知れない。
ふっと、課長と視線が絡んだ。
「今頃、バカのカレシは浮気してると思います。」
こんなチャンスを逃す奴じゃない。
操を立ててるわたしはピエロじゃないの?
「うん。それで?」
それで、と来るかよ。
「ええっと。困りました。
まさかそういう切り返しが来るとは思いませんでして。」
予想外の答えで、わたしは面食らってしまった。
課長はおそらく、わたしより先に迷いを吹っ切ってしまったのだ。
面白そうなモノを見る目で、わたしの事を観察していた。
頬杖なんかついて。
こっちがその気になったら、相手は醒めていた、なんて。
だけど、なんだかホッとしている自分に気付く。
ニヤニヤした笑いに見える課長の顔は、なんだか長年の同志のように心強かった。
これが、腹を割って話すってヤツなのかな。
「課長はわたしに気があるんだとばかりに思ってましたので、気が抜けました。」
こちらも負けじとニヤリで返してやった。
「……俺は、慎重な男なんだ。火遊びよりも、火傷の処置の面倒さを考える。」
「平気で七年も待たせる男ですもんね。」
慎重さは、ひっくり返って身勝手になる。
散々ヒトを焚き付けてその気にさせたヌリカベ妖怪は、勝手にとおせんぼの道を開けてくれていた。
二人してニヤニヤしてる姿は、穏やかな笑みを浮かべるママにはどんな風に映ってるかな。
いい雰囲気になってるな、と思った。
店内には静かなジャズと、少ないお客の囁きのような話し声が、まるでさざ波のように満ちている。
このまま、行くとこまで行ってもいいかな、なんて思っていた。
祐介はどうせまた、どこかの見知らぬ誰かに寂しそうな目を向けているんだ。
わたし一人が我慢したって、しなくたって同じなら。
ヤケになってるのかも知れないし、酔ってるからかも知れない。
ふっと、課長と視線が絡んだ。
「今頃、バカのカレシは浮気してると思います。」
こんなチャンスを逃す奴じゃない。
操を立ててるわたしはピエロじゃないの?
「うん。それで?」
それで、と来るかよ。
「ええっと。困りました。
まさかそういう切り返しが来るとは思いませんでして。」
予想外の答えで、わたしは面食らってしまった。
課長はおそらく、わたしより先に迷いを吹っ切ってしまったのだ。
面白そうなモノを見る目で、わたしの事を観察していた。
頬杖なんかついて。
こっちがその気になったら、相手は醒めていた、なんて。
だけど、なんだかホッとしている自分に気付く。
ニヤニヤした笑いに見える課長の顔は、なんだか長年の同志のように心強かった。
これが、腹を割って話すってヤツなのかな。
「課長はわたしに気があるんだとばかりに思ってましたので、気が抜けました。」
こちらも負けじとニヤリで返してやった。
「……俺は、慎重な男なんだ。火遊びよりも、火傷の処置の面倒さを考える。」
「平気で七年も待たせる男ですもんね。」
慎重さは、ひっくり返って身勝手になる。
散々ヒトを焚き付けてその気にさせたヌリカベ妖怪は、勝手にとおせんぼの道を開けてくれていた。
二人してニヤニヤしてる姿は、穏やかな笑みを浮かべるママにはどんな風に映ってるかな。