花は花に。鳥は鳥に。
 今回ばっかりは、もう限界。

 毎度のことで、赦してくれって言うけどさ、祐介。

 いったい、あと何回、わたしはこんな気分を味わう羽目になるの?


 裏切りという感覚が希薄なんだもんね。あんたは。

 ロクな死に方しないよ。

 ううん。幸せになんて、なるな。


 長いトンネルを抜けたと思ったら、またすぐにトンネル。

 窓の外にはオレンジの蛍光灯がラインのように続いていく。

 耳鳴りがして不快になる。

 いったい何処を走っているのかも、ゴールまでどのくらいかも解からない。

 誰かが恋の歌をうたう。

 無性に腹が立つ。


 いろんな事がいっぱいいっぱいで。

 溺れてしまいそうだ。


「紗江、パーキングだよ。ちょっと外の空気吸ったほうがいいってさ、」

 いつの間にか眠ってしまっていた。

 ふと目を開けると、敬子と並んでこっちを覗き込むイケメンと視線がぶつかった。


 え? なんでしょうか?

「美作さん、だったか。大丈夫か?

 座りっぱなしよりも、外で身体を伸ばしてきた方がいいぞ。」

 どうやらトイレ休憩でパーキングに停車したようだった。

 車内には他の人たちは居なくなっていた。

 わたしが最後という事みたいだった。

「大丈夫? 紗江?」

「ごめん、敬子。心配かけちゃった?

 ちょっと寝たらマシになったから。」

 心底心配そうな顔の敬子に無理やりで笑顔を作ってみせたけど、引き攣ってると思う。

 やだ、寝顔見られた、イケメンに。

 くち開けて、ヨダレ垂らしてたりしなかったかな。

 うわぁ、ハズカシイ。

 早く出よう、と身支度をする素振りで二人に訴えた。

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