花は花に。鳥は鳥に。
「本人は反省してるんでしょ? どうせ口先だけだろうけど。」

 わたしは半分、面倒に感じ始めていた。

 だから、多少ぶっきらぼうな言い方になっていた。

 紗枝はむくれた顔をしていた。


 祐介が浮気をしたという悩みは、すでに何度となく聞かされてきたからだ。

 正確には浮気未遂。

 紗枝は、関係しない限りはカウントしなくなった。

 妥協する範囲がどんどん広がっている事を、紗枝は認めようとしなかった。

「反省は……してないと思う。

 道を聞かれて案内するついでにお茶を奢ってあげてって、そもそもそこから間違ってるって、絶対に認めないもん。」

 わたしに愚痴る言葉は恐らく祐介の前で発せられることはないんだと思う。


 紗枝はモノマネで祐介の口調を真似た。

「良ければ、その辺で珈琲でも飲む?」

 祐介は、女の子が歩き疲れているだろうと思って休憩を勧めたのだと言ったらしい。

「道を聞いてきた子に、そこまで優しくする必要ないよね?」

 今度は真顔になってわたしに聞いた。

 いい加減、わたしは面倒臭くなっていた。

 解決する方法は一つしかないのに、紗枝はその方法を意図的に隠した。

「なんでだろ。アレさえなきゃ、なんの不満もないのに。」

 問題点が幾つあるかにすり替えて、涙ぐんだ。


 以前の未遂の件が、堪えているんだと思った。

 紗枝のカレシだと知っているはずの女がちょっかいを掛けてきて、紗枝は落ち込んでいたから。

 祐介が浮気性なのはもう充分に解かっているはずで、だから紗枝がショックを受けたのは他人のカレシと知ってて手を出してきた知人の女に対してだった。

 わたしはため息をこぼし、ぼそりと呟きを落とす。

「友達の友達なんてさ、所詮は他人だよ?」

「なんの話よ、それはもう終わってるの、今回のは逆ナンパだよ。」

 だから、逆ナンされた事で以前の件が蒸し返されたんでしょ? 言わずにおいた。

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