花は花に。鳥は鳥に。
「また連絡してええかな、」
控えめに、平井君の元カノはそう言った。
断ち切れない想いを、か細い糸の先へ結びつけた。
「いつでもええよ。
せやけど、こういう話は俺よか、女友達にでもした方がええと思う。」
平井君の返事を聞いて、わたしも心の中で頷いていた。
冷静な判断も、的確なアドバイスも、今の彼にはしてあげられないのだから。
結局、他愛ない昔話と世間の噂話だけでお茶を濁して、彼女は相談らしいことは言わなかった。
「あっ、ごめん。
あたし、用事を置いてきてるんや、これでおいとまするわな。」
適当に見計らったような唐突さで、彼女は席を立ち、慌ただしく去っていった。
最後まで、わたしに目を向けなかった。
気まずい沈黙だと、平井君は思っているかも知れない。
わたしは別段なにも気にすることなく、だんまりで冷めかけた珈琲をひと口啜った。
「下手な芝居に付き合ぅてもろて、すんませんでした。」
とうに空になったカップを見つめて、平井君はまた謝った。よく謝る子だ。
肩の荷は下りただろうか。わたしには、そうは思えなかった。
「あれで良かったの?」
「ええ。すんまへん、関係ないのに何や重たい空気で気分悪ぅしましたやろ。」
「ううん。けど、なんだか解からないままってのは、もやもやして嫌かな。」
軽口にそう言うと、平井君は困ったように眉を下げてわたしを見た。
他人に話すようなことじゃない、平井君は迷っていた。
もとより、彼を困らせるつもりはない。わたしはさっさと話を切り上げた。
「場所、変えよっか。お勧めだってお店、教えてくれる約束でしょ。」
「そうでした、案内しますわ。
そんで、僕に奢らしてください、お世話になったお礼やし。」
「じゃあ、遠慮なく。」
ようやくと腰を上げた二人を待ちかねたように、店員さんがレジへと先回りした。
もう閉店するのかも知れない、ちょっと長居しすぎたようだった。
控えめに、平井君の元カノはそう言った。
断ち切れない想いを、か細い糸の先へ結びつけた。
「いつでもええよ。
せやけど、こういう話は俺よか、女友達にでもした方がええと思う。」
平井君の返事を聞いて、わたしも心の中で頷いていた。
冷静な判断も、的確なアドバイスも、今の彼にはしてあげられないのだから。
結局、他愛ない昔話と世間の噂話だけでお茶を濁して、彼女は相談らしいことは言わなかった。
「あっ、ごめん。
あたし、用事を置いてきてるんや、これでおいとまするわな。」
適当に見計らったような唐突さで、彼女は席を立ち、慌ただしく去っていった。
最後まで、わたしに目を向けなかった。
気まずい沈黙だと、平井君は思っているかも知れない。
わたしは別段なにも気にすることなく、だんまりで冷めかけた珈琲をひと口啜った。
「下手な芝居に付き合ぅてもろて、すんませんでした。」
とうに空になったカップを見つめて、平井君はまた謝った。よく謝る子だ。
肩の荷は下りただろうか。わたしには、そうは思えなかった。
「あれで良かったの?」
「ええ。すんまへん、関係ないのに何や重たい空気で気分悪ぅしましたやろ。」
「ううん。けど、なんだか解からないままってのは、もやもやして嫌かな。」
軽口にそう言うと、平井君は困ったように眉を下げてわたしを見た。
他人に話すようなことじゃない、平井君は迷っていた。
もとより、彼を困らせるつもりはない。わたしはさっさと話を切り上げた。
「場所、変えよっか。お勧めだってお店、教えてくれる約束でしょ。」
「そうでした、案内しますわ。
そんで、僕に奢らしてください、お世話になったお礼やし。」
「じゃあ、遠慮なく。」
ようやくと腰を上げた二人を待ちかねたように、店員さんがレジへと先回りした。
もう閉店するのかも知れない、ちょっと長居しすぎたようだった。