魔力のない世界
「……さん、…さん……」
誰かが誰かを呼んでいる。
「み…さん、みずきさん…」
……ミズキ……?
「起きて下さい、瑞季さん…」
…誰?
「ここから出ましょう。瑞季さん…」
…ここ、から……
「私たちがあなたを誘導します。」
私を…?
「さあ、起きて…」
声が消えると、自然と目が覚めた。
現実味がある夢だった…
本当にここから抜け出すことができるのだろうか。
…いや、できるはずがない。
できたらとっくにここから抜け出している。
所詮夢は夢なのだ。
どんなに現実味があっても、信じちゃいけない。
「入浴の時間です。」
なんの前触れもなくドアが開いたかと思うと、"お邪魔します"の一言もなく白衣を着た女の人が入ってきた。
私は黙って立ち上がり部屋を出た。