初恋
「結衣は本当に俺のこと好きなの?」



ハッキリ言って分からない。

こんなにも愛されることが嬉しかった。
人気者のタクヤと付き合えることで優越感に浸れる自分が好きだったのかもしれない。




気分が乗らない。


まだ残暑が残る九月の終わり、マナミに移動教室を先に行っててと断り、一人になれる場所を探した。



…なんで…誰かといるのって疲れるんだろう。

一人は嫌いなのに、誰かといても疲れる。

作り笑いも疲れる。
マナミの話、タクヤの話、
聞いてるようで結衣は全然頭に入ってないんだろう。


転校生だからと騒がれるのも、
わざわざ他のクラスから結衣を見にくる人たちへの愛想笑いも疲れる。


よく分からないけど、そんな感じ。


とにかく、誰かといる空間は疲れる。
疲れる疲れる疲れる。




一人になりたい。
誰も構わないで。





そう思いながら、休み時間一人でフラフラしてると、入ったことない教室を見つけた。




ここ、何の教室なんだろう?




そっとドアを開けると、
何もないただの空間が広がっていた。

今は使われていない教室。





教室の壁には、「悩みがあったら相談室へ」と書かれたポスターと大きいソファーが一つ。
あとは、よくヤンキーがするようなスプレーの落書きが壁にされていた。
それだけ。



ソファーにはほこりがかぶっていて、多分何年も使われていないようだった。




「相談室って。
相談したくても、意味ないじゃん。」


結衣はソファーのほこりをはらって、寝転んだ。

同時に授業開始のチャイムが鳴り響いた。




「まぁ。いいや。
さぼっちゃおーっと。」


人生で初めて、授業をさぼってしまった。

内心ドキドキしたけど、
たまにはこういうのも必要だ。

一人になれる空間をやっと見つけた。



なんだか、嬉しくなって、目をつむるといつの間にか寝てしまっていた。
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