初恋
「おい!おまえ!ここで何やっている!授業だろ!!!!」





その怒鳴り声で目が覚めた。





…あれ?
いつの間に寝ちゃったんだろう。

結衣は目をこすりながら起き上がって

「ごめんなさい」
と言った。


すると、「プッ」と吹き出し、その後には大きな笑い声が部屋中を響かせた。



結衣はびっくりして顔をあげると、そこには先生ではなく制服を着た男子がいた。


「その顔!まぬけー!」

その男子はケラケラ笑い続けている。



「ちょっとー。笑いすぎ。」



結衣は軽く睨みつけた。


そういえばこの男子、見たことあるなぁ。
たまに教室にいたりする。
派手だから目立つ。

学級委員の千夏ちゃんとよくいるのを見かける。



…いいなぁ。
茶髪。
校則違反だらけの制服。

自由にできて、きっとこういう人ってストレスとかないんだろうなー。


正直、少し羨ましい。




「神崎結衣でも授業さぼったりするんだなー!」

とにかくよく笑うやつだった。


「なんでここにいるの?」

結衣は聞き返した。






「なんでって、逆になんで神崎結衣がここにいるんだよ。(笑)
イイコちゃんは授業授業〜」


嫌味ったらしくからかってきた。




その、イイコちゃんイメージが本当に嫌い。
結衣だって好きなことしたい。
干渉なんてされたくない。


だけど、こんなこと誰にも言えない。




「そうだよねー!
イイコちゃんの神崎結衣は授業に戻ります!」


結衣はニコッと笑顔をその男子に向けて、この部屋を出ようとした。




「お前さ〜、いっつもそうやって笑ってるけどそれって作り笑い?」



…はぁ???




「作り笑いなんてしたことないしっ」



こいつ、相当失礼なやつ。



「みんなお人形さんみたいで可愛い〜とか言ってるけどさー、俺かしたらお前ってただの人形にしか見えねー!(笑)」



そう言ってまたケラケラ笑い出した。










あー、こういうやつ。

一番むかつく。


自分は好きな時にしか学校にこないで自由を満喫してる。
そのくせに、やっとみつけた結衣の一人の空間さえも邪魔してくる。


気も使えない。
ありえない。
一番関わりたくないタイプ。






「ごめんね。
ここ、あなたが使ってたって知らなかった。
勝手に入ってごめんなさい。」



だけど、言いたいこと言えない自分にもイライラする。



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