初恋
…あ。
つい、思ったことが口に出てしまった。




「あっ!そうそう!好き好き!」


適当な誤魔化しは瀧澤の耳には入らなかったようで、


「好きって、なんだろうな〜」


と、意外な返事が返ってきた。




「瀧澤は、彼女とかいないの?」


「いねぇな〜。
俺、あんま好きっていう感情ないのかも。ゲイかな?」

「えっ、それ分かる!」

「いや、なんか突っ込めよ。(笑)」


「結衣もね!人に好きっていう感情がわかないの!!」






あ。

つい、ベラベラと話してしまった。


結衣らしくない。
何言ってるんだろう。




「タクヤは?」



こいつと話してると調子が崩れる。


「よく、わかんないよ…。
結衣、幸せを幸せって思えないのかな。
満足できないのは、きっと結衣がワガママすぎるんだよね。」



これが、本音。
さっき初めて話した人にこんなこと言ってしまうなんて自分でも信じられないけど、自然と話してしまった。




「んー。そうだな。
よし、学校から脱出しよーぜ!」


へ???



瀧澤はそう言って結衣の右手を引っ張って勢いよく相談室のドアを開けた。


そして玄関まで、誰もいない廊下を瀧澤に引っ張られるままに走った。





感じたことないドキドキ感。

先生に見つからないかっていうドキドキと、



あとは分からない。



結衣の知らない感情。


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