初恋
「で、何?用件は?」


あたしはふて腐れ気味に言った。


「大ニュース!!!




転校生くるらしーぜ!」




…はぁ?



「で?それが何?」

大ニュースでもなんでもない。
あたしはそれを伝えられるためだけに恥ずかしい思いをして、授業を抜け出し、後から呼び出されるはめになるのか。

バカが近くにいると大変。



「それがさー!すっげぇ可愛いらしい!
東京から来るらしくて、あっちでは読者モデル?とかもやってたらしーから!
やばくね?」


瀧澤がアホヅラしながらベラベラ一人で盛り上がっていた。


「ちょーーーどうでもいい!
授業戻る」

あたしは校舎の中へと向かった。



…あ。

「てか、なんでそんな誰も知らない情報あんたが知ってるの?」


あたしは振り返って聞いた。





「おまえさー、笹野んちの真ん前にすっげぇ豪邸あんの分かるだろ?
あそこの家の子らしーんだよ。
近所だからって昨日笹野んちに挨拶来たらしーんだけどさ、すっげー美人だったらしい。
まあ全部笹野情報。
笹野にとられねーよーにせいぜい頑張れよ!」


瀧澤は嫌味っぽく言った。



笹野。
それはあたしが入学してからずーっと片想いしてる人。

瀧澤の大親友で、ここらへんでは一番のヤンキー。というか、もはや暴走族に入っちゃってる系の。
学校にはほとんど来ない。
来たとしても、皆怖がって口を聞こうともしない。
そんなやつ。

あたしは瀧澤のおかげで仲良くなれたけど、笹野には年上の彼女がいる。
…というか、あいつには女がいっぱいいるらしい。
完全にあたしの片想いなのだ。
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