初恋
授業が終わり、呼び出されたあたしは職員室に。



「安西さんは成績だっていつもトップ。真面目で友達も多くて、先生からの信頼は抜群。
なのに、最近身なりを乱れてる。
スカートは短いし、化粧もしてるだろ?
県一の進学校目指してるなら、もっとちゃんとしなさい。
生まれてからずっと一緒にいる瀧澤をほっとけないのも分かるが、今は自分の将来を考えて行動しなさい。」


もう慣れた。
この説教も。

いつも同じことばかり。
あたしはこんな日常に飽き飽きしてるっていうのに。


だけど、どうしても譲れない夢があった。

あたしの将来の夢は医者になること。
そのためにも卒業したら県一の進学校に入学して、大学は東京へ行きたかった。

この田舎から一刻も早く脱出したかった。


「すみませんでした。
以後、気をつけます。」


「そういえばお前、笹野とつるんでるのか?」


先生の突然の言葉に下げてた頭を上げた。


「目撃情報出てるぞ。
あいつとはつるむな。
笹野はいい噂ないだろ。
最近ではドラッグの噂まである。
そんなやつとつるんでるのがバレたら推薦できなくなるぞ。」




あたしはため息をついた。


「推薦なんてされなくても、実力で入学してみせますよ。」


あたしはそう言って職員室を出ようとした。


…が、引きとめられる。



「あー!それと。
お前に伝えておきたいことがもう一つ。
明日、うちのクラスに転校生がくる。
東京からで…」



「お嬢様でちょーーーーー可愛い子!ですよね?」

先生の言葉を遮って言った。


「それがなー、神崎財閥の娘さんなんだよ。
どうやら事情で、親は東京、娘さん一人でこっちに来たらしい。
お手伝いさんと二人で暮らすらしいが、先生にもよく分からない。
まあ、仲良くしてやってくれ!」




神崎財閥…。
あたしでも分かる。
新聞にも大きく取り上げられてるから。

そんなお嬢様なんだ。
なんでまたこんな田舎に…。

「わかりました。
任せてください。」

あたしは作り笑顔と共に職員室をあとにした。





< 5 / 28 >

この作品をシェア

pagetop