初恋
あたしたちは三年生になった。
受験生になり、あたしはひたすらに勉強した。


二年生から三年生は、クラス替えがなく瀧澤とは相変わらず同じクラスだった。
神崎結衣も。

ちなみに神崎結衣はあれから一度も学校には来ていない。


瀧澤も三年生になってから今まで以上に教室に来なくなった。

一緒に登校してるから学校にはいるはずなのに、教室には来ない。

いつも学校のどこにいるの?と聞いたことはあるが、教えてくれなかった。
隠し事のないあたし達に、瀧澤は初めてあたしに隠し事をした。

逆に気になっていた。


あいつは高校には行かないと言い張り授業に出ないでいたが、あたしとしては高校へ行ってほしかった。
バカな瀧澤は今のことしか考えてない。
完全に今が楽しければいい主義なのだ。


あたしには分かる。
高校を出て、損はないということ。



なのに、あいつは最近もっぱら元気がない。
悩み事があるんだとは思うけど、聞きづらかった。








そんなある日のこと。

授業中、あたしのケータイが震えた。
もちろんあたしの中学ではケータイ持ち込み禁止。

先生に見つかったらまためんどくさいことになるのでいつもはシカトだけど、カバンの隙間から光るケータイに「笹野」と表示されているのが見えた。



あたしはカバンごと持って教室を抜け出しトイレに駆け込んだ。

受験生だと自分に言い聞かせ、最近は授業も真面目に受けているあたしでも、笹野となると何もかもが壊される。




あたしは急いで出た。


「もしもしっ!」


声が高くなる。

しかし、応答がない。



…あれ?
間違ってかかっちゃっただけなのかな?


あたしはしょんぼりしてトイレの個室から出た。


その瞬間だった。



ドンッ



あたしの肩にすごい勢いで何かぶつかり、あたしは尻餅をついた。



「いたっ…」


隣には息を切らす見たことない女の子の姿。


女の子はしゃがみこんだままうずくまり肩を震わせていた。
< 9 / 28 >

この作品をシェア

pagetop