□□□□□□□セクシー・コメディ□□□□□□□「コンクリート・ジャングル」
目が細く、団子鼻。吹き出物いっぱい。
今すぐ床屋行けよ、といいたなくなるようなセミロングのボサボサ髪。
無地ピンクのトレーナーにデニムのロングフレアスカート。
若い女の声だと思ったのに、
全っっ然、若くない!
年齢不詳だけど、34歳の私より、絶対歳上…おばさん。
こいつがさっきのいやらしい声の主だとは……
「こんにちは…」
私は頭を少し下げ、彼女を心の中で
「力士」と命名した。
力士は私を呼び止めた。
「あなた、新人ね。私、深田リョウコ。なんかわかんないことあったら、
私に訊いて。煙草吸うんだったら、
一緒に行かない?」
意外だった。
力士の声はものすごく可愛かった。
カナリアのさえずりみたいに甘く涼しく、よく通る。
私は「あ、私、煙草吸わないんで…」と顔の前で右手をひらひらさせた。
「あっそう。私、ここでヨネダに姫って呼ばれてるの。
だから、あなたもそう呼んでね」
力士は余計なことを言った。
「はい」
私は一応、笑顔で返事をした。